プログラマ行進曲第二章

主にソフトウェア関連の技術をネタにした記事を執筆するためのブログ

カズオ・イシグロの『忘れられた巨人』をやっと読み終わりました

12月になり、今年も終わろうとしているのでこう書いても大丈夫だと思いますが、個人的に今年一番驚いたことはカズオ・イシグロノーベル文学賞を受賞したことでした。

日の名残り』、『わたしたちが孤児だったころ』、『わたしを離さないで』、『夜想曲集』といった氏の著作を読んでいたくらいのにわかなファンだったのですが、10月5日、仕事から帰宅して一息つきながらネットを見ていたら、「今年のノーベル文学賞カズオ・イシグロが受賞!」というニュースを見つけて思わずビックリし、私と同じく氏の著作を好きで読んでいた親に思わず「今年のノーベル文学賞カズオ・イシグロだってさ!」と言いに行ったくらいです。

最初こそ驚いたものの、少し時間が経って落ち着いた頃、こう思いました。

「実績や実力を考えたらカズオ・イシグロノーベル文学賞を受賞しても何の不思議でもないな」と。

文学部にいた癖にたいして文学のことを知らない私ですが、そんな私でも氏の著作はいい意味で文学作品によくありがちな堅苦しさが少なく、(エンタメ小説ほどではないにしろ)面白く読める作品ばかりで、好きな作家の一人です。

で、そんな氏の著作最新作の文庫が凄い良いタイミングで出版されたので購入してやっと読み終わりました。

読み終わったときの感想

ツイートしていたので引用。

…半分くらいは冗談の混じった感想ですが、実際に感じたことなので、機会がある人は『忘れられた巨人』を読んでみるといいと思います。作中で登場する『霧』がどんなものなのかといった軽いネタバレを知っておいた方が逆に楽しめるかもしれません。

忘れられた巨人』は今まで読んできた氏の著作の中でどれくらいの良さだったか?

最初にも触れたとおり、私がこれまで読んだことのあるカズオ・イシグロの作品は『忘れられた巨人』を除くと以下の通りです。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)

この中で私が一番好きなのは『夜想曲集』ですね。カズオ・イシグロの作品の中で唯一の短編集なんですが、だいぶ心に染みる話が多い印象があります。その次が『わたしを離さないで』でしょうか。

世間的な評価だと『日の名残り』と『わたしを離さないで』が二強のような気がしますが、私としてはこんな風に感じています。

で、今回の『忘れられた巨人』がどれくらいだったか自分なりに振り返ってみると、読後の最初のインパクトこそ『わたしを離さないで』などと比べると弱いものの、時間が経ってからふとまた読みたくなる具合で言ったら『夜想曲集』の次に来るくらいには気に入りました。

カズオ・イシグロの作品、舞台設定だけでなく世界観も結構作品によってバラバラなので一律に楽しさを比較することができないと個人的に思っています。特に今回の『忘れられた巨人』は6世紀のイギリス(ブリテン島)を舞台にしたファンタジー要素の強い小説なので、今までのどの作品とも毛色が違うのですが、巷でよく言われているように、これまでの氏の著作にも通底する「記憶とは何なのか?」というテーマが本作にも盛り込まれているので、一回読んだ後ある程度時間をおいてまた読みたくなる作品だなと思いました。

…全く本の内容とか面白さを伝えない記事になってしまいましたが、そんなもんですね。

ノーベル文学賞で話題になってたし、話のネタに読んでみるか」くらいの軽いノリの人には最初のカズオ・イシグロ作品として『忘れられた巨人』はいいかもしれません。

これまでだったら『わたしを離さないで』を順当に薦めていると思うのですが、ノーベル文学賞の受賞の報道の際に『わたしを離さないで』の盛大なネタバレがテレビ含めて各種報道でバンバンされていたので、まだそこまでネタバレっぽいのが蔓延していないという意味でも『忘れられた巨人』はいいと思います。

個人的には久し振りにファンタジー小説で楽しめてよかったです。